数年前に撮った写真を、最近まとめて見直す機会がありました。
撮った瞬間は「おっ、いい感じ」と思ったはずの1枚が、あとから見るとどこか色がのっぺりしている。空は白とび気味で、影はつぶれて真っ黒。輪郭だけが必要以上にシャープで、全体からは乾いた、いわゆるデジタルのプラスチック感みたいなものが漂っています。
もともとフィルムカメラの色が好きで、特にフジフィルムの、緑が少し沈んで、ハイライトがふわっと柔らかくなるあの空気感が好きです。とはいえカメラを新調する気にはなれなくて、「手持ちのiPhoneの写真を、できるだけその色に近づけられないか」とずっと思っていました。
いろいろ試した結果、いまはHuePhotoのフィルム系フィルターに落ち着いています。普段はポスターを作ったりフォトブックをめくったりするときに使っているアプリなのですが、色を整えるだけでも十分に仕事をしてくれる。ここしばらく、晴れの日と曇りの日でレシピを2つ使い分けているので、メモがわりにまとめておきます。
直出しの写真は、なぜちょっと惜しいのか
iPhoneのカメラは正直よくできていて、そのままでも十分綺麗です。ただ、晴れの日は空が白とびしやすく、曇りの日は青みがかった灰色に沈みがち。さらに輪郭のシャープさが強めなので、なんとなく「撮ったまんま」の印象になりがちです。
フィルムの色はその逆で、ハイライトが柔らかく、影にも情報が残っていて、トーン全体が少しだけにじんで見えます。だからわたしのやり方は、色を盛って「加工」するのではなく、フィルムの色を借りてきて、トーンを一度リセットし直す、というものです。
レシピ① 晴れの日(散歩、街角、午後の光)

撮るタイミングは真昼を避けて、午後3時すぎの斜射光が理想です。光が横から差し込むと壁や木の葉に影が落ちて、画面に深みが出ます。構図では、レンガの壁や木の看板みたいな暖色がどこかに入ると、空の青と自然に引き合ってくれます。レンズは1xでも2xでも構いませんが、3xがある機種なら望遠側で圧縮すると、背景の雑然とした感じが締まります。
レシピはこちら。
晴れの日レシピ(Classic Chrome / 濃さ85%)
- 露出:+7:白とび気味の空に息を吹き戻すための土台。
- ハイライト:-20:いちばん効く項目。強い光を一度引くと、空の青と顔まわりの情報が戻ってきます。
- ビビッド:+15:画面の層をはっきりさせます。盛りすぎると偽物っぽくなるので注意。
- コントラスト:+8:トーンに軽くメリハリをつける程度。
- フィルムグレイン:+10:紙の質感が少しだけ思い出される程度が好きです。盛りすぎるとただのノイズになります。
レシピ② 曇りの日と室内(カフェ、窓辺、雨)

曇りの日や室内は、まず露出で画面を持ち上げるところから始めます。薄暗い原片のまま色をいじっても、なんだか写真が沈んだままなので。
曇りの日レシピ(Pro Neg / 濃さ75%)
- 露出:+10:まず画面の土台を明るく持ち上げます。
- 色温度:+8:このレシピの芯。青みがかった灰色を、ほんの少しだけ暖かい側へ寄せます。
- コントラスト:+25:明暗の差が乏しい曇り空の写真に、空気の抜けをつくります。
- シャドウ:+12:影の中の情報を残したまま、そこだけ軽くします。
- フィルムグレイン:+15:銀塩っぽいざらつきを少し足します。
露出で画面を持ち上げる
薄暗い原片のまま色をいじらない。まず明るさの土台をつくります。
色温度を暖かい側へ
+8めやす。くすみが取れて、空気に抜けが出ます。
コントラストとシャドウで整える
思い切って+25。それでもくすむときは、仕上げにハイライトを少し引くとすっと晴れます。
数値はあくまで「ここから」
もちろん、この数値がすべての写真にそのまま合うわけではありません。光の量も被写体も写真ごとに違うので、わたしはいつも±5くらいの幅で、目を頼りに動かしています。
要点をひとつだけ言うなら、この2行だけで、直出しの写真の印象はだいぶ変わると思います。
あと、これは自分への戒めでもあるのですが、色を足し込むほど写真は「加工しました」と言い出します。フィルムっぽさは、足す方向より引く方向で出ることが多い。迷ったら数値を半分にして保存しています。
晴れはハイライトを引く、曇りは色温度を上げる。
おわりに:色が整うと、撮った日の記憶まで戻ってくる
ずっと「なんか惜しい」と思いながら消さずにいた写真を、このレシピでやり直してみたら、久しぶりに引き伸ばして眺めたくなる1枚になりました。色が整うと、撮った日の天気や時間の記憶までくっきり戻ってくるのが面白いところです。
手元に惜しいと感じている写真が1枚でもあるなら、曇りの日レシピから試してみるのがおすすめです。変化がわかりやすいので。
前回の記事で書いた3Dフォトブックに、この色で仕上げた写真を放り込んでみたら、急に「一冊の本」っぽく見え始めて、ちょっと得した気分になっています。それでは、また次の記事で。

